大好きな今敏監督のアニメ映画3作品
今敏監督とは
北海道生まれのアニメ映画監督。
漫画家としてデビューした後、数々のアニメ制作に携わり『PERFECT BLUE』で初監督を務めました。
2010年、膵臓がんのため46歳の若さでお亡くなりになりました。
10年以上前に初めて『千年女優』を観てから今敏監督の作品が好きです。
平沢進師匠の音楽に覚醒(!)したのも『千年女優』のエンディングでした。
非常に思い出深く今も大好きな今敏監督の映画の中から3つを振り返ってみたいと思います。
『千年女優』
往年の大女優「藤原千代子」の半生を、映像制作会社の二人がインタビューする形で物語が進みます。
撮影中に突如姿を消して以来、30年の沈黙を破りなぜ取材を受ける気になったのか…。
千代子の人生の目的は、思想犯として追われていた男「鍵の君」との再会でした。
大手映画製作会社「銀映」に入り女優として成功しあの人に見つけてもらうことを夢見て、映画の中であらゆる時代のあらゆる人生を演じる千代子。
次第に現実と映画の世界が入り混じり、インタビュアーまで巻き込んで時空を超えた千代子の一生が展開します。
関東大震災の日に生を受け、激動の時代に翻弄された千代子の波乱に満ちた人生が映画の役と重なってグルグル展開する不思議な感覚に引き込まれた映画です。
どの千代子もすごく能動的で一途。どんな時代の役でも、自分が大人になっても「鍵の君」を探す千代子は少女の頃の気持ちのままなのでしょう。
千代子の大ファンであるインタビュアーの頑張りも見どころ。いい味出してます。
観終わった後、切ないけれどやり切ったような不思議な気持ちになった映画です。
平沢進のエンディング曲も聞いてみてくださいね。
『東京ゴッドファーザーズ』
笑って泣ける人情コメディ。
クリスマスの夜、ゴミ捨て場にプレゼントが捨ててないかと漁りにやってきた三人のホームレス、ミユキ、ギンちゃん、ハナちゃんが一人の赤ん坊を拾ってしまい、大騒動になるお話です。
ミユキは家出少女で、ギンちゃんは自称元競輪選手、ハナちゃんは元ドラァグクイーン。
三人は赤ん坊に「清子」と名付け、本当の親を探そうということに。
この「清子」がなぜか行く先々で奇跡を起こします。
東京の様々な人間模様を巻き込んだドタバタ劇はやがて三人が人生に向き合うきっかけをもたらします。
行く先々でうまいこと連鎖するストーリーがテンポもよくて痛快です。
歓楽街やホームレス生活の描写が凝ってますね。
ギンちゃん役の江守徹さん、ハナちゃん役の梅垣義明さんの掛け合いも見どころ。
そしてクリスマスの小さな奇跡にちょっとほろりとします。
『パプリカ』
DCミニ。それは好みの夢を見たり、人と同じ夢に入ることができる画期的なマシン。
サイコセラピー機器の開発を手掛ける研究員の千葉敦子は、DCミニを使って極秘にサイコセラピー活動をしていました。
その仮の姿が夢探偵「パプリカ」です。
クールビューティーの敦子と対象的に、天真爛漫な少女の姿のパプリカ。
物語はこの両者の視点、さらに現実と夢の間を激しく行き来しながら展開します。
DCミニが盗まれ、人に悪夢を見せて精神に異常をきたすという事件が相次いで発生。
パプリカは夢の世界に飛び込み、捜査を開始しますが犯人の罠に苦戦を強いられます。
そして夢は夢の領域を超えて現実が侵食され始めて……。
原作は筒井康隆のSF小説ですがアニメではやや変更点もあるようですね。
サスペンスなストーリー展開の面白さと、物語の鍵となる夢の世界の描写に圧倒されます。
悪夢に侵された人が見るパレードのシーンは絢爛で狂気に満ち、なんだか癖になりそう最高です!
平沢進師匠の「Parade」も絶妙にマッチ。
「夢の世界に行けたらなあ」という夢の斜め上を行く夢の世界をご堪能ください。
今ワールドに迷い込む
今敏監督のこれらの映画に共通する点は「迷い込むこと」です。
夢に、記憶(映画)に、都会の雑踏に、登場人物たちは迷い込んでいます。
そしてそれぞれの、立場の違う彼ら彼女らは最終的には答えを見つけていると思います。
決してどれが正解ということもなく、迷い込まなかったら得なかったもの、考えなかったことが見えるような、そんな想像の余地を残すところが、私が今敏監督作品を好きな理由の一つです。
監督は晩年、『夢見る機械』の制作に取り組んでいましたが残念ながら未完となっています。
監督の構想の中には今度はどんな風に「迷い込む」物語があったのでしょうね。